日本学術会議 URSI-C小委員会 第23期 第6回公開研究会の開催報告

テーマ:
「マルチアンテナのための減結合回路の基本と応用」


1.報告者:日本学術会議URSI-C小委員会 委員 深沢 徹(三菱電機(株))

2.日時:2016年6月16日(木) 13:20〜16:20

3.場所:北海道大学 工学部 情報科学研究棟(高層棟)11階 会議室
 (北海道札幌市北区)

4.参加費:無料

5.出席者数:26名

6.ローカルアレンジメント:日景 隆 委員(北海道大学)

7.研究会テーマ:「マルチアンテナのための減結合回路の基本と応用」

8.講演
  • 13:20〜13:30 開会挨拶 委員長 菊間 信良(名古屋工業大学)
  • 13:30〜14:10 「マルチビームアンテナの減結合解析と回路設計」
    鹿子嶋 憲一(茨城大学 名誉教授)
  • 14:10〜14:50 「減結合回路の広帯域化設計」
    牧村 英俊(三菱電機(株))
  • 14:50〜15:00 休憩(10分)
  • 15:00〜15:40 「相互アドミタンスを指標としたMIMOアンテナの結合低減に関する検討」
    佐藤 浩(パナソニック(株))
  • 15:40〜16:20 「Full-Duplex MIMO方式に向けたアレーアンテナ空間減結合方式の特性」
    本間 尚樹(岩手大学)
  • 16:20 閉会

9.懇親会:
 キリンビール園 新館アーバン店(北海道札幌市中央区)
 参加者:16名

10.その他:
 委員会を6月16日(木)12:00〜13:00に北海道大学会議室で実施.

12.所感:
 近年、小形無線端末や基地局の中に多数のアンテナを搭載したマルチアンテナを用いる通信が普及している。アンテナを狭い筐体内に近接させて配置すると相互結合が生じ、アンテナの効率や相関が低下するという問題が生じる。これを回路的に解決する方法の一つとして、減結合回路が提案され、十年ほど前より盛んに研究されてきた。減結合回路は単なるアンテナ端子間の結合を低減するだけでなく、ビームの直交化や、固有ビームとQ値の関係等にも関わっており、回路と空間の両方の要素を合わせ持つ興味深い研究対象である。また、最近では実際の小形端末に搭載されつつあり、学術面、実用面の両方で興味深い。
 今回は、茨城大の鹿子嶋名誉教授より「マルチビームアンテナの減結合解析と回路設計」、三菱電機の牧村氏より「減結合回路の広帯域化設計」、パナソニックの佐藤氏より「相互アドミタンスを指標としたMIMOアンテナの結合低減に関する検討」、岩手大の本間准教授より「Full-Duplex MIMO方式に向けたアレーアンテナ空間減結合方式の特性」の題目で講演を頂いた。鹿子嶋先生には、ダイポールアレーの規範問題に対し、相互アドミタンスを基にしたベクトル表現で減結合のための条件、ビームの直交性、固有ビームとQ値との関係を統合的に講演頂いた。牧村氏には実際の小形アンテナで生じる結合振幅や位相の大きな周波数特性に対して、広帯域に結合を低減する方法を講演頂いた。佐藤氏には端末上の2つのモノポールアンテナに対して、マルチバンドにおける減結合特性を得るためにアンテナ構造と回路を適切に組み合わせることが有用であることを講演頂いた。本間先生にはFull-Duplex化を目的として、送受信アンテナ間の結合を低減するため、固有ビームの一つを減結合に利用する方法を提案頂き、いくつかのアンテナ配置に対する理論と実験に関して講演頂いた。
 各講演の後や懇親会の場においても参加者間に活発な議論がなされており、電波科学の研究者、技術者にとって、今後の研究開発の進め方を考える上で有意義な場となったと思われる。




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