日本学術会議 URSI-C小委員会 第24期 第7回公開研究会の開催報告

テーマ:
「5G以降の高速大容量無線通信を支える半導体デバイス技術」


1. 報告者:日本学術会議URSI-C小委員会 委員 尾辻 泰一(東北大学)

2. 日時:2019年12月6日(金) 13:30〜17:25

3. 場所:鹿児島大学 郡元キャンパス 工学部 電気電子棟1F 23号室
(〒890-8580 鹿児島県鹿児島市郡元1丁目21番24号)

4. 参加費:無料

5. 出席者数:20名

6. テクニカルアレンジメント:尾辻 泰一(東北大学)

7. ローカルアレンジメント:西川健二郎(鹿児島大学)

8.協賛
  • IEEE MTT-S Japan Chapter
  • IEEE AP-S Fukuoka Chapter
  • IEEE VT-S Tokyo/Japan Chapter
  • IEEE VT-S Tokyo/Japan Chapter
  • IEEE SSCS Japan Chapter
  • IEEE EDS Japan Chapter

9.研究会テーマ:「5G以降の高速大容量無線通信を支える半導体デバイス技術」

10.講演
  • 13:45〜13:55 開会挨拶
    太郎丸 眞 (福岡大学)
  • 13:55〜14:45 「5G移動通信システムへの発展と今後の展望」
    安達 文幸(東北大学)
  • 14:45〜15:35 「5G用CMOS発振器の位相雑音の低減について」
    バカラト アデル(九州大学)
  • 15:35〜15:45 休憩 (10分)
  • 15:45〜16:35 「5G無線に向けたプレナーアンテナ集積型高効率プッシュプル増幅器」
    久保木 猛(九州大学)
  • 16:35〜17:25 「高速大容量無線に向けた半導体光デバイスによるテラヘルツ波の制御」
    加藤 和利(九州大学)
  • 17:25閉会

11. 懇親会
 時間:18:30〜20:30
 場所:黒豚料理「寿庵」鹿児島中央西口店
    https://r.gnavi.co.jp/f200207/
 参加者:20名

12. その他
 委員会を12月6日(金曜) 13:00〜13:25に鹿児島大学 郡元キャンパス 工学部 電気電子棟1F 23号室にて実施.

13. 所感
 移動体無線通信技術の高速・大容量化が進展し,5Gのリリースがいよいよ来年に迫るなか,次世代,次々世代となるbeyond 5Gや6Gの研究開発も活発化してきている.本会では,5G以降の高速大容量無線通信を支える半導体デバイス技術に焦点をあてて,デバイスから回路,システムに至る一連の分野の第一線で活躍する研究者が一堂に会し,学術的な側面からの研究と産業応用に向けた実用化開発の双方の最先端の取り組みについて,講演・質疑応答を中心として深く議論し,今後の見通しに対する共通理解を深めた.
 安達文幸博士(東北大)は,第5世代移動通信システムに至るこれまでの過程と,5Gの開発の一端としてMIMO技術,さらには今後の高度化に向けたbeyond 5G〜6Gの果たすインパクトと研究開発課題について講演した.4Gまではスペクトル利用効率の向上に努力が注がれてきたが,5G以降ではエネルギー利用効率(Whr/bit)の向上も重要課題となる.分散型MIMO無線はそのブレークスルーとして期待される.
 バカラト アデル博士(九大)は,5G用CMOS発振器,具体的にはKu帯CMOS-VCO (Voltage Controlled Oscillator)の位相雑音の低減化技術について,最新の成果を講演した.発振帯域の低域側もしくは高域側にLC直列共振を導入することによって発振帯域のQ値の向上と抑圧比の改善が同時に図れることを提案し,コプレナーストリップ線路で構成しK帯20.22 GHzで,および25 GHz帯で従来と同等の低消費電力と広い比帯域で従来性能を上回る低移送雑音を実現した.
 久保木猛博士(九大)は,5G無線に向けたプレナーアンテナ集積型高効率プッシュプル増幅器について,最新の成果を講演した.第一に,5GHz帯高効率平面スロットアンテナ一体型CMOSプッシュプルパワーアンプについて,50オーム以外でのインピーダンス整合を図ることで電力負荷効率を向上し最大30.9%のPAEを実現した.第二に,ポスト5Gに向けた300 GHz帯集積プレナーアンテナ技術として,基板厚に依存しないスロットアンテナの優位性を示した.
 加藤和利博士(九大)は,高速大容量無線に向けた半導体光デバイスによるテラヘルツ波の制御について,最新の成果を講演した.レーザー二光波の混合でコヒーレントなミリ波・サブミリ波発生が可能なフォトミキシングダイオードは,二光波間の位相制御でテラヘルツ波帯での位相変調が簡単に実現できる反面,課題はレーザー光の位相雑音の抑止と変換効率の改善にある.波長分散制御型の新規な光位相変調器とアンテナ集積したフォトミキサをアレイ化することによってその課題解決を図れることを示した.
 本研究会はポスト5Gが議論され始めている現在のその先にある6G,そしてBeyond 6Gへのロードマップの具体化に大いに資するものであり,参加者それぞれが思い描く未来像に対して現実の最先端研究開発状況の理解と技術課題・見通しに対する意識共有の場として,本研究会は大変有益であった.




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